「利は元にあり」に学ぶ工数管理とは? ~「人」が原価となるビジネスの利益を守る原価管理~
ディ・ポップスグループは、「リアルビジネス × テクノロジー × グループシナジー」を掛け合わせた事業展開をしている会社の集合体で、100年後も社会から必要とされ続けるベンチャーエコシステムの実現を目指しています。
今回は派遣ビジネスやSES・受託開発のように「人」が原価となるビジネスについて、松下幸之助の「利は元にあり」という言葉を手がかりに、利益を出すために欠かせない「工数管理」を解説してまいります。
1.「利は元にあり」と工数管理
有名な松下幸之助の「利は元にあり」という言葉がありますが、この「利は元にあり」という言葉は、長期的に利益を出すには、売上を上げたり売価を上げたりすることよりも、上手な仕入れや原価の管理が最も重要である、という意味です。この言葉はさまざまな人がいろいろな解釈をしていますが、今回は、この「利は元にあり」を「人」が原価となるビジネスについて当てはめ話を進めていきたいと思います。「人」が原価となるビジネスで長期的に利益を出すためには、人数を増やして売上をあげたり、受け値の単価をあげたりするよりもまず「上手な稼働の管理」をしっかり行うということが「利は元にあり」にピッタリあてはまると思います。
まず、ひとつお断りをしておきます。今回の話は、会計上で人が原価に算入される場合の話です。表現が難しいところですが、表現を変えるとわかりづらくなるため、語弊を生む可能性があることを承知のうえで「人=原価」として記載します。
2.工数管理には種類がある
今回取り上げるのは、弊社のグループ会社でも実施している、「人」が原価となるビジネス、具体的には、派遣ビジネスやSES・受託開発のビジネスです。これらのビジネスの中で工数管理とひとくくりに言っても、いくつかの種類があります。
一つは、SESや派遣ビジネスの中心である、1人の方がクライアントにフルタイムで派遣されたり、フルタイムの仕事を請け負うビジネスの工数管理です。
いつから契約があっていつ契約が終了するかを把握し、契約の切れ目で次の仕事に切れ目がないように、仕事のバトンを回せる管理をすることです。仕事は常に1人工で入っているので、工数管理というより「稼働管理」や「契約管理」という表現の方がよいかもしれません。
2つ目は、工数管理としては本命なんですが、エンジニア系でいえば受託開発・準委任、販売系でいえばイベントで週末だけ稼働している方の管理がこれに当たります。例えばAさんが月に160時間働く雇用だとすると、いま割り振られている仕事が160時間分の仕事=1人工の仕事になっているのかを管理することです。
3.工数管理ができていないと何が起こるか(派遣ビジネスの場合)
この工数管理ができていないとどうなるかを上記の例をとって見てみたいと思います。前者の例では、例えば8月末までの仕事をしているのに、9月以降のことは考えていない、行動していないということが起こった場合、9月から人工が浮いてしまい、売上がなくなったうえに正社員型の派遣であれば給与だけが発生することになります。
正社員型の派遣で販売職を例に簡単な試算をしてみます。一般的な販売系の派遣業でいえば、売上が38万円程度、社保含めた給与が30万円程度で、利益が8万円程度だとおもいます。100人で稼ぐ利益は800万円程度になります。
もし30%(30人)が稼働できなければ、売上総利益の段階ですでに赤字
20%(20人)が稼働できなければ、利益が200万円で、販管費が5%以下でないと営業利益の段階で赤字
10%(10人)が稼働できなければ、利益が500万円で、販管費が13%以下でないと営業利益の段階で赤字
5%(5人)が稼働できなければ、利益が650万円で、販管費が17%以下でないと営業利益の段階で赤字
となります。常識的な販管費率を考えると、工数管理(稼働管理)ができず非稼働率が5%あったら、ほとんどの派遣会社では利益が出ないというのが現実かと思います。
4.エンジニア系(受託開発・準委任)の場合
後者については、エンジニア系を例にとります。受託開発や準委任でエンジニアを20人抱えている場合、単純に1人が月に160時間働くとすると、3,200時間の稼働時間があります。工数管理ができておらず、この人工が埋められていないと、前者の例と同様に、売上がなくエンジニアが社員の場合、給与だけが発生するということが起こります。
受託開発や準委任の場合は、派遣ビジネスと違い、人工の売上や利益の幅に大きな上下が発生するので一概には言えませんが、仮に20人の給与を800万円とすると、販管費率が売上の5%なら850万円、10%なら890万円、15%なら950万円、20%なら1,000万円、30%なら1,150万円以上の売上を毎月上げないと赤字になります。
ただ、受託開発や準委任のエンジニア系の仕事ではあるあるですが、人工の売上や利益の幅に大きな上下があるので、ものすごく儲かる仕事があったり、数名の方がものすごく稼いでいたりすることが普通に起こるということです。そのため、工数管理などという面倒なことをしなくても何とかなってしまう状況が発生します。その結果、ものすごく儲かる仕事がなくなる、すごく稼いでいた方が独立して離職する、仕事そのものが来なくなる、というピンチが来たときに、工数管理をしていないと、誰に工数的な余力があり誰に余力がないのかがわからず、仕事を割り振れないということになります。あるいは、このような追い込まれた状況になって初めて、工数的に見て余力があった人、つまりはこれまで仕事をしていなかった人がわかる、という状況になります。
上記の例でいえば、エンジニア20人に対して単純に3,200時間あるわけですが、工数管理をしたうえで最低でも95%の3,000時間くらいは稼働した結果として利益が出ている、という状況で普段から経営していないと、いろいろな問題が起こったときに対応できず、大きな赤字を引き起こす、又は対応できずに倒産するという結果になると思います。普段から工数管理をしていれば、実際には問題が起こる前に、仕事がなくて人が浮くことがわかるので、ある程度は事前に対応できるわけです。
5.「勝ちに不思議の勝ちあり」――工数管理なき経営のリスク
最近は、受託開発や準委任のビジネスはAIの影響を非常に受けやすくなっています。たとえ今利益が出ていても、工数管理をしないでビジネスをしている会社は、ヤクルトの野村監督で有名な松浦静山という人の言葉、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」の「不思議の勝ち」が起きているだけです。特定の仕事や特定の人に頼っているだけですので、正直、経営とは言えません。面倒でも、原価社員の工数管理は必須です。工数管理ができていないと、先ほどの例のようにビジネスが逆回転を始めたときにビジネスが一気に崩れ、そのビジネスを回復することは非常に困難だと思います。
6.派遣・SES以外の業種にも当てはまる――小売業の例
この考え方は派遣やSES以外の業種にも当てはまるのでしょうか。
小売業の例に置き換えると、たくさんの商品がある中で、1個か2個の商品が大ヒットしてすごく売れているおかげで経営できている状況を把握せずに、どんどん品揃えを増やしている状況と同じです。すごく売れている商品が流行の流れで売れなくなれば、売上が下がり、増やした品揃えの在庫だけが残ることになります。一発で倒産します。
小売りの世界では工数管理と言わず「単品管理」と言いますが、上記の例は、何がどのくらい売れているのかを把握しないで仕入れをして、売れない在庫が大量に発生しているのに、大ヒット商品で売上があるので偶然経営ができている、という状況です。よくある話のように感じますが、この例を、先ほどの「誰に工数的な余力があり誰に余力がないのかわからないまま、特定の仕事や人で売上があるので工数管理をせずに経営している状況」に当てはめると、ピッタリくるのではないかと思います。
7.まとめ
今回取り上げている「人」が原価となるビジネスで利益を上げたければ、販売系の派遣ビジネスでも、エンジニア系のSESや受託開発・準委任のビジネスでも、営業マンを増やして新規の仕事を取って売上を上げたり、採用を増やして原価となる人を増やし売上を上げたり、高単価の仕事を選んで販売価格を上げたりすることよりもまず、働く社員の工数管理(稼働管理)を行い、最適な人員数で最適な人工を実現する上手な原価管理、すなわち「利は元にあり」を実践することが、利益を出すことに直結すると思います。
今回の「工数管理」の話を通してディ・ポップスグループとしてお伝えしたいことは、ビジネスは例えるなら打撃、組み技、寝技を駆使して戦う総合格闘技の様のもので、売上を追いかける営業や人増やす採用や開発する技術といったことがバラバラで成り立っているわけではなく、「工数管理」のように非常に地味なことがしっかりできていることが前提でその上に営業や採用や技術といったことを駆使することで成り立っていると言うことです。営業が良いから、技術があるからだけでビジネスが成り立つのではなく、「工数管理」の様に非常に地味なことがしっかりできていることが大切であるとディ・ポップスグループは考えます。
ディ・ポップスグループのベンチャーエコシステムでは、単一事業ではなく多岐にわたる事業の実践的な経験と知識を元に、経営や事業のヒントになる本音のインプットをこれからも実施してまいります。
これからもご支援、応援の程、よろしくお願いします。D-POPS GROUP 常務執行役員 渡辺哲也
※この記事の内容をVoicyでもお話ししています。ぜひお聞きください!